開業の手続き

軽貨物の開業の手続き|届出、黒ナンバー、安全管理者のチェックリスト

会社を辞めて軽貨物を始める予定
黒ナンバーを取れば、すぐに配達の仕事を始められますか?
編集部
2025年4月以後に届け出る人は、黒ナンバーのほかに、安全管理者の選任と初任診断を、事業を始めるまでに済ませます。

軽貨物ドライバーとして開業する手続きは、運輸支局への届出、黒ナンバーへの変更、安全管理の準備、税務署への届出の4つに分かれます。 やる順番は次のとおりです。

  1. 車と車庫を用意し、任意保険を決める
  2. 貨物軽自動車安全管理者講習を受ける(5時間以上。eラーニングで受けられる機関もある)
  3. 運輸支局に、経営届出書と運賃料金設定届出書を出す
  4. 軽自動車検査協会で、ナンバーを黒ナンバーに変える
  5. 運輸支局に、安全管理者の選任を届け出る
  6. 初任診断(適性診断)を受け、初任運転者の指導の内容を学ぶ
  7. 運転者等台帳を作り、アルコール検知器と業務記録の用意をする
  8. 税務署に開業届を出す(青色申告にするなら承認申請書も)

2025年4月1日の貨物自動車運送事業法と輸送安全規則の改正で、5と6、7のうち運転者等台帳と業務記録が加わりました。 一人で事業をする人も、自分を安全管理者に選び、自分が初任診断を受けます。 改正前の手順で書かれた解説は、経営届出と黒ナンバーで終わっていることがあるので、その順番で進めると改正で加わった手順が抜けます。

この記事は、貨物自動車運送事業法、同法施行規則、輸送安全規則の条文(e-Gov、2026年10月21日に確認)と、国土交通省と運輸局のリーフレットやよくある質問をもとにしています。 車庫の距離や窓口での書類の扱いは運輸局ごとに決まっており、この記事では四国運輸局の公示と案内を例にしています。 届け出る前に、営業所の所在地を管轄する運輸支局の案内を確かめてください。

開業までのチェックリスト

上の8つの手順を、どこで、いつまでに、いくらかかるかと一緒に並べました。

順番 やること 窓口 期限 費用
1 車と車庫を用意し、任意保険を決める 販売店、リース会社、保険会社 経営届出の前 車による
2 安全管理者講習を受ける 国土交通大臣の登録講習機関 選任の日の前2年以内に修了 3,300〜3,700円(確かめた3機関)
3 経営届出書と運賃料金設定届出書を出す 営業所を管轄する運輸支局 事業を始める前 かからない
4 黒ナンバーに変える 軽自動車検査協会 経営届出の後 ナンバープレート代など(額は地域で違う)
5 安全管理者の選任を届け出る 運輸支局 選任したら遅滞なく 運輸局の資料に記載なし
6 初任診断を受け、初任運転者の指導を受ける 国土交通大臣の認定を受けた診断の機関 事業用の車に初めて乗る前 初任診断4,800円(NASVA)
7 運転者等台帳、アルコール検知器、業務記録の用意 自分で用意 事業を始める前 アルコール検知器の代金など
8 開業届を出す 税務署 2026年以後の開業は、その年分の確定申告の期限まで かからない

1. 車と車庫を用意し、任意保険を決める

経営届出書には、使う車の数、車庫の位置と広さ、休憩や睡眠の施設を書きます。 そのため、車と車庫は届出の前に決めておきます。

車は、1台から届け出られます。 2022年からは、軽乗用車(5ナンバー)も黒ナンバーにして使えるようになりました。 軽乗用車で運べる重さは、乗車定員から乗る人数を引いた数に55kgをかけた重さまでで、定員4人の車に1人で乗るなら165kgです。

車庫について、四国運輸局の公示は、原則として営業所に併せて置き、できなければ営業所から2km以内としています。 広さは軽自動車1台あたり8㎡以上で、使う権利があることと、都市計画法などに違反しないことを、届出書の宣誓書で約束します。 ほかの運輸局の距離の基準は、管轄の運輸支局で確かめます。

宣誓書では、自賠責に加えて、任意保険に入るなどして事故の損害を賠償できることも約束します。 任意保険は、黒ナンバーの軽バンで使うことを保険会社に伝えて、営業用で入れるかを確かめます。 委託元が補償の内容を決めていることもあり、たとえば Amazon Flex は、対人無制限と対物1億円以上の任意保険を求めています。

車を買うかリースにするかは「軽貨物の車の選び方」で、車を持つと毎年かかる費用は「軽貨物の年間維持費」で比べています。

2. 安全管理者講習を受ける

安全管理者に選べるのは、国土交通大臣の登録を受けた講習機関で安全管理者講習を修了した人です。 講習の修了は「選任の日の前2年以内」であればよいので、経営届出の前に受けておけます。 NASVA(自動車事故対策機構)など3つの機関はeラーニングで講習をしていて、受講料は3,300〜3,700円でした。 5で選任を届け出るときに修了証明書の写しを付けるので、修了したら証明書を保存しておきます。

講習を受ける時期と、受けた後の定期講習は「貨物軽自動車安全管理者とは」にまとめています。

3. 経営届出書と運賃料金設定届出書を出す

営業所の所在地を管轄する運輸支局に、貨物軽自動車運送事業経営届出書を出します。 届出に手数料はかかりません。 四国運輸局の案内では、新しく届け出るときに次の書類を用意します。

  • 経営届出書(宣誓書を含む)
  • 運賃料金設定届出書と運賃料金表
  • 運送約款(国の標準貨物軽自動車運送約款を使うなら不要)
  • 事業用自動車等連絡書(窓口でもらえるが、事前に作っておくと早い)
  • 車検証(窓口で見せる。新車で車検証がなければ、完成検査終了証など車の諸元が分かる書類)

運賃料金設定届出書は、運賃と料金を決めてから30日以内に出す決まりで、経営届出書と同時に出してもよいとされています。 届出書の記載に問題がなく、車の諸元が分かる書類を持っていれば、その場で事業用自動車等連絡書が出ます。

4. 黒ナンバーに変える

運輸支局でもらった事業用自動車等連絡書を持って、軽自動車検査協会でナンバーを黒ナンバーに変えます。 持っていくものは、車検証、今のナンバープレート、自動車検査証変更記録申請書、事業用自動車等連絡書です。 あわせて、協会の隣にある税の窓口に、軽自動車税の申告(報告)書を出します。

ナンバープレート代と、協会の近くの関係団体での手続きの費用がかかりますが、協会のページには額が書かれていません。 額は地域の関係団体ごとに違います。 黄色ナンバーから黒ナンバーに変えるときに、車検を受け直す必要はありません。 黒ナンバーでは、希望番号や図柄入りのナンバーは選べません。

黒ナンバーに変えると、軽自動車税と重量税が営業用の額になります。 変える時期と税額の関係は「営業用の軽貨物の税金と自賠責」で確かめられます。

5. 安全管理者の選任を届け出る

貨物自動車運送事業法36条の2は、経営届出の後、速やかに、営業所ごとに安全管理者を1人選ぶことを求めています。 国土交通省のよくある質問は、2025年4月以後に届け出た事業者は、事業を始めるまでに選ぶとしています。 選んだら遅滞なく、修了証明書の写しを付けて運輸支局に届け出ます。 2025年9月からは、オンラインでも届け出られるようになりました(先行運用)。

6. 初任診断を受け、初任運転者の指導を受ける

輸送安全規則10条2項は、軽貨物の事業者に、運転者として初めて事業用の車に乗る人へ特別な指導をして、国土交通大臣の認定を受けた適性診断を受けさせることを求めています。 一人で事業をする人は、自分が初任診断を受け、指導の内容を自分で学びます。 初任診断は、NASVAでは約1時間40分で4,800円です。 初任運転者への特別な指導は、車に同乗して行う指導を除いて合計5時間以上で、外部の研修を使ってもよいとされています。 事業用の車に初めて乗る前の3年以内に安全管理者講習を受けていれば、この特別な指導をしたものとみなすことができます(国土交通省の告示「指導及び監督の指針」)。

65歳以上の人と、死傷事故を起こした人も、同じく特別な指導と適性診断(65歳以上は適齢診断)の対象です。

7. 運転者等台帳、アルコール検知器、業務記録の用意

事業を始める前に、次の3つを用意します。

  • 運転者等台帳:運転者ごとに、氏名、住所、生年月日、初めて業務をした日、指導と適性診断の状況を書き、営業所に置く
  • アルコール検知器:乗務の前後の点呼で、目で見て確かめることとあわせて使う。営業所ごとに置く
  • 業務記録:業務の開始と終了の地点と日時、主な経過地点、走った距離などを書く様式。国土交通省の様式例があり、パソコンやスマートフォンで記録してよい

車の両側面には、氏名か名称を縦横10cm以上の文字で表示します(四国運輸局の公示とよくある質問)。 マグネットシートで表示してもよいとされています。

8. 開業届を出す

税務署には、個人事業の開業届出書を出します。 2026年1月1日以後に開業した場合、期限は開業した年分の確定申告の期限までです。 2025年12月31日までに開業した場合は、改正前の決まりで、開業した日から1か月以内でした。

青色申告で申告したい人は、所得税の青色申告承認申請書を別に出します。 期限は、青色申告をしたい年の3月15日まで、その年の1月16日以後に事業を始めたなら、事業を始めた日から2か月以内です。

事業を始めた後に続けること

黒ナンバーを取った後も、事業を続けるあいだ、次の記録と手続きが続きます。 一人で事業をしている人も、点呼は自分で自分を確かめる形で行い、記録を残します。

やること 頻度、期限 記録の保存 根拠
点呼(酒気帯び、体調、日常点検の確認) 毎回の乗務の前と後 1年 輸送安全規則7条
業務記録 業務のたび 1年 輸送安全規則8条
運転者への指導と監督 毎年 3年 輸送安全規則10条1項(毎年という頻度は国土交通省のリーフレットとよくある質問)
事故の記録(概要、原因、再発防止策) 事故が起きたとき 3年 輸送安全規則9条の2
国土交通大臣への事故報告 死者や重傷者が出た事故などは30日以内。2人以上が死亡するなどの重大な事故は24時間以内に速報 ― 国土交通省のリーフレットとよくある質問
安全管理者の定期講習 選任の日から2年ごと ― 貨物自動車運送事業法36条の2第3項
定期点検 1年ごと(日常点検は走行距離や運行の状態から判断した時期) ― 国土交通省のよくある質問
変更の届出 車の数、営業所、車庫などを変えるとき ― 貨物自動車運送事業法36条1項

車が0台になる場合は、事業の休止という扱いはなく、廃止の届出を出します。 事業を再開するときは、あらためて経営届出をします。

2025年3月末までに届け出た人の期限

2025年3月31日までに経営届出をしていた事業者には、安全管理者の選任と、初任診断などに猶予があります。 猶予があるのは届け出た時期で決まり、2025年4月1日以後に届け出た人には猶予がありません。

義務 2025年3月31日までに届け出た事業者 2025年4月1日以後に届け出た事業者 根拠
安全管理者の選任(講習の修了が必要) 2027年3月31日まで 届出の後、事業を始めるまで 改正法(令和6年法律第23号)附則4条
初任運転者などへの特別な指導と適性診断 2028年3月31日まで 猶予なし 改正省令(令和6年国土交通省令第90号)附則3条

業務記録、事故の記録、運転者等台帳には、この猶予がありません。 改正省令の附則が猶予を定めているのは、特別な指導と適性診断だけです。

よくある誤りと正しい内容

軽貨物の開業の手続きを説明した記事には、罰則の額や、安全管理者が必要になる条件を誤って書いたものがあります。 2026年10月21日に、貨物自動車運送事業法と道路交通法の条文で確かめた内容は次のとおりです。

よくある書き方 正しい内容 根拠
安全管理者を選ばないと50万円以下の罰金 100万円以下の罰金 貨物自動車運送事業法75条6号
車が5台以上になると安全管理者が必要 台数にかかわらず、営業所ごとに1人 同法36条の2第1項
経営届出をして黒ナンバーを取れば開業できる 2025年4月以後に届け出た人は、事業を始めるまでに安全管理者の選任と初任診断も要る 同法36条の2、輸送安全規則10条2項
安全管理者の選任は2027年3月まで猶予がある 猶予は2025年3月31日までに届け出た事業者だけ 改正法附則4条
安全管理者講習は一度受ければよい 選任の日から2年ごとに定期講習を受ける 同法36条の2第3項、輸送安全規則33条の3
開業届は開業から1か月以内に出す 2026年1月1日以後の開業は、その年分の確定申告の期限まで 所得税法229条

「50万円以下の罰金」と「5台以上」は、道路交通法の安全運転管理者の決まりです。 安全運転管理者は、乗車定員11人以上の車なら1台、それ以外の車なら5台以上を使う事業所ごとに選ぶもので、選ばないと50万円以下の罰金です(道路交通法74条の3、119条の2、同法施行規則9条の8)。 軽貨物の事業者も、車を5台以上使うと安全運転管理者を選ぶことになり、貨物軽自動車安全管理者とは別に、選んでから15日以内に公安委員会に届け出ます。 名前の似た2つの制度が、記事の中で混ざっていると考えられます。

手続きをしなかったときの罰則

貨物自動車運送事業法で、軽貨物の事業者にかかわる主な罰則は次のとおりです。

違反 罰則 条文
経営届出をしないで事業をした 100万円以下の罰金 75条11号
安全管理者を選ばない 100万円以下の罰金 75条6号
安全管理者の選任や解任を届け出ない、うその届出をした 100万円以下の罰金 75条7号
事故を届け出ない、うその届出をした 50万円以下の過料 81条4号
廃止などの届出をしない 50万円以下の過料 81条6号

罰金は刑事罰で、過料は刑事罰ではない行政上の罰です。 このほか、法令に違反したときには、国土交通大臣が車の使用の停止や事業の停止を命じることができます(36条2項で準用する33条)。

状況ごとに次に読む記事

  • これから開業する人:安全管理者講習を受ける時期と、選任の届出の書き方を「貨物軽自動車安全管理者とは」で確かめる
  • 車をまだ決めていない人:購入とリースの違いを「軽貨物の車の選び方」で比べる
  • 会社員のまま土日だけ始める人:届出と安全管理の義務は専業の人と同じ。収支と確定申告が要るかを「土日だけの副業で軽貨物はいくら残るか」で確かめる
  • 2025年3月末までに届け出ている人:安全管理者の選任は2027年3月31日まで、初任診断などは2028年3月31日までに済ませる

開業の前に、売上から経費と税金を引いていくら残るかを手取りの計算で確かめておくと、委託の条件を比べるときの基準になります。

よくある質問

軽貨物の開業には、どんな手続きが要りますか?
運輸支局に貨物軽自動車運送事業の経営届出と運賃料金の届出を出し、軽自動車検査協会で黒ナンバーに変えます。2025年4月以後に届け出る人は、これに加えて、事業を始めるまでに貨物軽自動車安全管理者を選んで運輸支局に届け出て、初任診断を受けます。税務署には開業届を出します。
一人で軽貨物をする場合も、安全管理者は必要ですか?
必要です。貨物自動車運送事業法36条の2は、台数にかかわらず営業所ごとに1人の安全管理者を選ぶことを求めています。一人で事業をしている人は、自分で安全管理者講習を受けて、自分を安全管理者に選びます。
安全管理者を選ばないと、どんな罰則がありますか?
100万円以下の罰金です(貨物自動車運送事業法75条6号)。選任や解任の届出をしなかったときと、うその届出をしたときも、同じく100万円以下の罰金です(同7号)。「50万円以下の罰金」という説明は、道路交通法の安全運転管理者の罰則と混ざっています。
経営届出から黒ナンバーの交付まで、何日かかりますか?
書類がそろっていれば、同じ日に済むことがあります。四国運輸局の案内では、届出書の記載に問題がなく、車の諸元が分かる書類を持っていれば、その場で事業用自動車等連絡書を出すとしています。連絡書を持って軽自動車検査協会に行けば、黒ナンバーに変えられます。

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