開業の手続き

貨物軽自動車安全管理者とは|2025年4月の改正で一人でも必要になったこと

貨物軽自動車安全管理者は、黒ナンバーの軽バンで荷物を運ぶ事業者が、営業所ごとに1人選ぶ、運行の安全を確保する業務を行う人です。 2025年4月1日の貨物自動車運送事業法の改正で新しく設けられました。 台数の要件はなく、一人で事業をしている人も、自分で講習を受けて自分を安全管理者に選びます。

2025年4月1日以後に経営届出をした人が、安全管理者についてやることは次の順番です。

  1. 国土交通大臣の登録を受けた機関で、安全管理者講習(5時間以上)を受ける
  2. 運輸支局に経営届出をした後、事業を始めるまでに自分(または家族など)を安全管理者に選ぶ
  3. 選んだら遅滞なく、講習の修了証明書の写しを付けて運輸支局に届け出る
  4. 選任の日から2年ごとに定期講習(2時間以上)を受ける

選ばなかったときと、選任の届出をしなかったときの罰則は、どちらも100万円以下の罰金です。 2025年3月31日までに経営届出をしていた事業者は、2027年3月31日まで選任が猶予されています。

この記事は、貨物自動車運送事業法、輸送安全規則と、改正法の附則の条文(e-Gov、2026年10月21日に確認)と、国土交通省と運輸局のリーフレットやよくある質問をもとにしています。

安全管理者を選ぶ必要がある事業者

安全管理者を選ぶ義務は、貨物軽自動車運送事業者のうち、四輪以上の軽自動車で貨物を運ぶ事業者にかかります(貨物自動車運送事業法36条の2第1項)。 黒ナンバーの軽バンや軽乗用車で配達をする人は、これに当たります。 三輪や二輪で運ぶバイク便の事業者は、安全管理者、適性診断、業務記録の対象外です。

義務は事業者ごとではなく営業所ごとで、車の台数は関係ありません。 1台で一人で事業をしている人も、会社員が副業として土日だけ配達をする人も、営業所が1つなら安全管理者を1人選びます。

一人で事業をしている人は、基本は本人が安全管理者になります。 国土交通省のよくある質問では、配偶者など、事業を手伝う家族から選んでもよいとしています。 誰を選んでも、選ばれる人が講習を修了していることが条件です。

講習から定期講習までの順番

安全管理者に選べるのは、次のどれかに当たる人です(36条の2第1項1〜3号)。

  • 安全管理者講習を、選任の日の前2年以内に修了した人
  • 安全管理者講習を修了したことがあり、定期講習を選任の日の前2年以内に修了した人
  • 一般貨物自動車運送事業などもしている事業者で、その運行管理者に選ばれている人

軽貨物だけをする人は、上の2つのどちらかで選ばれます。 講習を修了してから2年以内であれば、選ぶ時期は講習の後でかまいません。 そのため、講習は経営届出の前に受けておけます。

いつ何をするかは、経営届出をした時期で分かれます。

時期 2025年4月1日以後に経営届出をした人 2025年3月31日までに経営届出をしていた人
経営届出の前 安全管理者講習を受けて修了証明書を保存する ―
選任の期限 届出の後、速やかに(国土交通省のよくある質問では事業を始めるまで) 2027年3月31日まで
選任の届出 選んだら遅滞なく、運輸支局に 同じ
定期講習 選任の日から2年ごと 同じ
初任診断などの適性診断と特別な指導 事業用の車に初めて乗る前 2028年3月31日まで

2025年3月31日までに届け出ていた人の猶予は、改正法(令和6年法律第23号)附則4条で、施行の日から2年を経過する日までと決まっています。 猶予があるのは選任の時期だけで、2027年4月1日以後は、選んでいないと義務に違反します。

講習の修了から2年を過ぎてから選ぶ場合は、前の講習だけでは条件を満たしません。 その場合は、定期講習を受けるか、安全管理者講習を受け直してから選びます。

講習の受講料と形式

安全管理者講習は、国土交通大臣の登録を受けた講習機関が行い、2026年10月時点で17機関が登録されています。 受講料は国が決めておらず、国土交通省のよくある質問は、各講習機関に問い合わせるよう案内しています。 受講料を公式のページで確かめられたのは、eラーニングで講習をしている次の3機関です。

貨物軽自動車安全管理者講習と適性診断の料金
区分実施する機関料金補足出典
安全管理者講習貨物軽自動車安全管理者講習(5時間)自動車事故対策機構(NASVA、JG001)eラーニング3,700円(税込)受講期間は支払日を含む30日。定期講習は「準備中」[1][2]
安全管理者講習貨物軽自動車安全管理者講習(5時間)ヤマト・スタッフ・サプライ(JG002)eラーニング3,630円(税込)利用期間30日[3]
安全管理者講習貨物軽自動車安全管理者講習(約5時間)全国軽貨物協会(JG013)eラーニング(対面は準備中)3,300円(税込)ページに「受講料…は正式な実施内容に基づき掲載します」との注記あり[4]
安全管理者講習貨物軽自動車安全管理者講習そのほかの登録講習機関(14機関)対面が中心(自動車学校など)確認できず受講料は国の定めがなく、機関ごとに決まる[5]
適性診断初任診断(適性診断)自動車事故対策機構(NASVA)4,800円(税込)約1時間40分。ほかの認定機関の料金は確認できず[6]
適性診断適齢診断(65歳以上)自動車事故対策機構(NASVA)4,800円(税込)約1時間40分[7]
届出安全管理者の選任の届出運輸支局確認できず国土交通省と運輸局の資料に手数料の記載はない。Amazon Flex の FAQ は「270円の手数料が発生」と書いている[8][9]二次情報のみ

※税込、税抜は出典のページの表記に従っています。「税の表記なし」は、ページに税込か税抜かが書かれていなかったものです。

※「二次情報のみ」は、公式の資料が見つからず、報道や解説記事などにしか書かれていない値です。

※2025年4月以後に経営届出をした事業者は、事業を始めるまでに安全管理者を選任し(講習の修了が必要)、初任運転者に適性診断を受けさせます。1人で事業をしていても、自分が安全管理者になり、自分が初任診断を受けます。

※安全管理者は、選任後2年ごとに定期講習(2時間以上)を受けます。

※登録講習機関は17機関あります(国土交通省の一覧)。料金を確かめられたのは上の3機関だけです。

※「確認できず」は、公式のページで確かめられなかった値です。推測では埋めていません。

出典(確認日 2026.10.19〜2026.10.21)

  1. [1] www.nasva.go.jp/fusegu/kamotsu_kousyu.html(確認日 2026.10.21)
  2. [2] www.nasva.go.jp/fusegu/elearning_anzen.html(確認日 2026.10.21)
  3. [3] www.y-staff-supply.co.jp/service/safety/cargo_safety/(確認日 2026.10.21)
  4. [4] zenkeikyo.jp/safety-course/(確認日 2026.10.21)
  5. [5] www.mlit.go.jp/jidosha/jidosha_tk2_000173.html(確認日 2026.10.19)
  6. [6] www.nasva.go.jp/fusegu/syonin.html(確認日 2026.10.21)
  7. [7] www.nasva.go.jp/fusegu/tekirei.html(確認日 2026.10.21)
  8. [8] www.mlit.go.jp/jidosha/content/001841732.docx(確認日 2026.10.21)
  9. [9] flex.amazon.co.jp/faq(確認日 2026.10.21)

講習は5時間以上、定期講習は2時間以上です。 NASVAとヤマト・スタッフ・サプライのeラーニングは、受講できる期間が30日です。 登録講習機関の一覧は、国土交通省の登録講習機関の一覧で確かめられます。

定期講習の受講料は、2026年10月21日時点で確かめられていません。 NASVAのページでは、定期講習は準備中になっています。 2025年4月に選んだ人の最初の定期講習は2027年4月までなので、それまでに各機関の案内を確かめます。

選任の届出に書くこと

安全管理者を選んだら、遅滞なく運輸支局に届け出ます(36条の2第2項)。 輸送安全規則33条の2は、届出書に次のことを書くよう決めています。

  • 事業者の氏名と住所(法人なら名称、住所、代表者の氏名)
  • 安全管理者の氏名と生年月日
  • 安全管理者が業務を行う営業所の名称と所在地
  • 安全管理者に兼職があるか(あれば、その職名と職務の内容)

届出書には、講習の修了証明書の写しを付けます。 国土交通省が様式の例をExcelで公開しています。 2025年9月からは、オンラインでも届け出られるようになりました(先行運用)。

届出の手数料は、国土交通省と運輸局の資料には書かれていません。 Amazon Flex のよくある質問は「270円の手数料が発生」と書いていますが、公式の資料では確かめられていないので、窓口で確かめてください。

安全管理者を解任したときと、別の人に替えたときも、同じく届け出ます。

安全管理者を選んだ後に続けること

安全管理者は、事業用の車の運行の安全を確保する業務を行う人として選ばれます。 点呼や記録をつける義務は、輸送安全規則で事業者に課されています。 一人で事業をしている人は、事業者としても安全管理者としても、次のことを自分で行います。

やること 頻度 記録の保存 根拠
点呼(酒気帯び、体調、日常点検の確認)。アルコール検知器を使う 乗務の前と後 1年 輸送安全規則7条
業務記録(業務の開始と終了の地点と日時、主な経過地点、走った距離など) 業務のたび 1年 輸送安全規則8条
事故の記録(日時、場所、概要、原因、再発防止策など) 事故が起きたとき 3年 輸送安全規則9条の2
運転者等台帳(指導と適性診断の状況) 運転者ごとに作る 運転者でなくなってから3年 輸送安全規則9条の6
運転者への指導と監督 毎年 3年 輸送安全規則10条1項(毎年という頻度は国土交通省のリーフレットとよくある質問)
定期講習 選任の日から2年ごと ― 貨物自動車運送事業法36条の2第3項

死者や重傷者が出た事故などは、30日以内に運輸支局を通して国土交通大臣に報告します。 報告しなかったときや、うその報告をしたときは、50万円以下の過料です(貨物自動車運送事業法81条4号)。

よくある誤りと正しい内容

安全管理者について書かれた記事には、罰則の額や、選ぶ必要がある条件を誤って書いたものがあります。 2026年10月21日に条文で確かめた内容は次のとおりです。

よくある書き方 正しい内容 根拠
選ばないと50万円以下の罰金 100万円以下の罰金 貨物自動車運送事業法75条6号
車が5台以上になると必要 台数にかかわらず、営業所ごとに1人 同法36条の2第1項
一人で事業をしているなら不要 一人でも必要。本人か家族などから選ぶ 同法36条の2第1項、国土交通省のよくある質問
新しく始める人も2027年3月まで猶予がある 猶予は2025年3月31日までに届け出た事業者だけ 改正法附則4条
講習を受ければ届出は要らない 選任と解任は運輸支局に届け出る。届け出ないと100万円以下の罰金 同法36条の2第2項、75条7号
講習は一度受ければよい 選任の日から2年ごとに定期講習を受ける 同法36条の2第3項、輸送安全規則33条の3

「50万円以下の罰金」と「5台以上」は、道路交通法の安全運転管理者の決まりと同じです。 道路交通法の安全運転管理者は、乗車定員11人以上の車なら1台、それ以外の車なら5台以上を使う事業所ごとに選ぶもので、選ばないと50万円以下の罰金です(道路交通法74条の3、119条の2、同法施行規則9条の8)。 軽貨物の事業者も、車を5台以上使うと、貨物軽自動車安全管理者とは別に安全運転管理者を選ぶことになります。

次にやること

これから開業する人は、安全管理者講習を先に受けておくと、経営届出の後に選任の届出までを続けて進められます。 経営届出、黒ナンバーへの変更、初任診断を含めた開業の手続き全体の順番は「軽貨物の開業の手続き」のチェックリストで確かめられます。

講習の受講料、初任診断、定期講習は、売上から引く経費になります。 車の維持費とあわせて、いくら残るかは手取りの計算で確かめてください。

よくある質問

貨物軽自動車安全管理者は、一人で事業をしていても必要ですか?
必要です。貨物自動車運送事業法36条の2は、四輪以上の軽自動車で荷物を運ぶ事業者に、台数にかかわらず営業所ごとに1人の安全管理者を選ぶことを求めています。一人で事業をしている人は、自分で安全管理者講習を受けて、自分を選びます。
安全管理者講習はいくらかかりますか?
2026年10月21日に確かめたeラーニングの講習は、自動車事故対策機構(NASVA)が3,700円、ヤマト・スタッフ・サプライが3,630円、全国軽貨物協会が3,300円(いずれも税込)でした。受講料は国が決めておらず、講習機関ごとに違います。
安全管理者講習は、経営届出の前に受けてもいいですか?
受けられます。安全管理者に選べるのは、講習を選任の日の前2年以内に修了した人なので、届出の前に受けておき、届出の後すぐに選任を届け出られます。修了から2年を過ぎてから選ぶ場合は、定期講習を受けるか、講習を受け直してから選びます。
安全管理者の定期講習はいつ受けますか?
選任の日から2年ごとに受けます(貨物自動車運送事業法36条の2第3項、輸送安全規則33条の3)。定期講習は2時間以上の講習で、国土交通大臣の登録を受けた定期講習の機関が行います。

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