会社員が土日に月8日、軽貨物の配達をした場合、売上から経費と所得税、住民税を引いて残る額の目安は、1日4時間ほど働く例で月約3.5万円、1日8時間ほど働く例で月約8.6万円です。 どちらの例も、経費を引いた所得が1年で20万円を超えるので、確定申告が必要になります。
この額は、次の前提で計算した目安です。
- 自分の軽バンを黒ナンバーにして使い、車の購入費は入れない
- 1日の売上は、仮に4時間ほどで8,000円、8時間ほどで16,000円とする
- 1日80km走り、ガソリンは仮に1Lあたり170円とする
- 営業用の任意保険に入り直し、保険料を仮に年10万円とする
- 給与の所得税の税率が10%の会社員とする
会社の健康保険と厚生年金に入っている会社員の副業では、軽貨物の所得に国民年金や国民健康保険の保険料はかからず、所得税と住民税が増えます。 このため、個人事業主として専業で働く場合の「軽貨物ドライバーの手取り」とは、引くものが違います。 計算した額は目安で、実際の税額は確定申告と市区町村の決定で決まります。
土日だけの副業の収支の計算例
前提をそろえて、1日の売上だけを変えた2つの例です。 売上から経費を引いた所得は、このサイトの手取りの計算と同じ式で出しました。
| 項目(1年) | 例1:1日4時間ほど | 例2:1日8時間ほど |
|---|---|---|
| 1日の売上(仮定) | 8,000円 | 16,000円 |
| 売上(月8日 × 12か月) | 768,000円 | 1,536,000円 |
| 経費 | 239,444円 | 239,444円 |
| 所得(売上 − 経費) | 528,556円 | 1,296,556円 |
| 所得税と復興特別所得税の増加(税率10%の人) | 53,964円 | 132,377円 |
| 住民税の増加(10%) | 52,855円 | 129,655円 |
| 残る額(1年) | 421,737円 | 1,034,524円 |
| 残る額(1か月あたり) | 35,145円 | 86,210円 |
経費の239,444円の内訳は次のとおりです。
| 経費の項目 | 1年 | 計算 |
|---|---|---|
| 燃料費 | 86,464円 | 月640km(80km × 8日)÷ 15.1km/L × 170円 × 12か月 |
| 車の税、自賠責、車検の手数料 | 16,980円 | 営業用の軽バン、13年以内、2026年11月以後の自賠責、持込検査 |
| 任意保険 | 100,000円 | 仮に年10万円とした場合 |
| そのほかの経費 | 36,000円 | 仮に月3,000円とした場合(携帯電話の通信費の業務の分など) |
税の増加は、副業の所得に、給与の所得税の税率(10%)と、その2.1%の復興特別所得税、住民税の10%を掛けた概算です。 給与の課税される所得金額が195万円未満の人は税率が5%、330万円以上の人は20%以上なので、その場合は所得税の増加が変わります。 この概算は、副業の所得を足しても、所得税の税率の区分と基礎控除の額が変わらない人を前提にしています。 2026年分の所得税の基礎控除は、合計所得金額が489万円以下なら104万円、489万円を超えると67万円以下に下がります(国税庁 No.1199)。 副業の所得を足して税率の区分が上がる人や、合計所得金額が489万円を超える人は、所得税の増加がこの概算より大きくなります。 例2で、給与の税率が5%なら1か月あたり約9.2万円、20%なら約7.5万円残ります。
前提を表にまとめると次のとおりです。
| 項目 | 前提 | 根拠 |
|---|---|---|
| 稼働日数 | 月8日(土日) | 例として置いた条件 |
| 1日の売上 | 8,000円(4時間ほど)、16,000円(8時間ほど) | 仮定。Amazon Flex の公式の「約4時間の稼働で最大9,600円」より低く置いた |
| 委託手数料 | なし | 例として置いた条件 |
| 車 | 持っている軽バンを黒ナンバーにして使う。購入費、減価償却費は入れない | 例として置いた条件 |
| 走行距離と燃費 | 1日80km、15.1km/L | 走行距離は仮定。燃費はスズキ エブリイの WLTC 燃費の幅の下限 |
| ガソリン単価 | 仮に1Lあたり170円とした場合 | 公式の値は確かめられていない(編集部の仮定) |
| 任意保険料 | 仮に年10万円とした場合 | 黒ナンバーの保険料の公式の例は見つかっていない(編集部の仮定) |
| 申告 | 白色申告(青色申告特別控除なし) | 例として置いた条件 |
| 税率 | 給与の所得税の税率10%、住民税10% | 国税庁 No.2260、総務省 |
経費のうち、稼働日数で減らないもの
土日だけの副業では、経費のうち稼働日数に関係なくかかる額の割合が大きくなります。 上の例の経費239,444円のうち、燃料費を除く152,980円は、月に何日働いても同じ額です。
いちばん大きいのは任意保険です。 黒ナンバーの軽バンは営業用の任意保険に入る必要があり、委託元が補償の内容を決めていることもあります(Amazon Flex は対人無制限と対物1億円以上を求めている)。 営業用の保険料は等級や年齢、補償の内容で変わり、この例の年10万円は仮の値です。 自分の見積もりの額で計算し直すと、残る額は大きく変わることがあります。
開業のときには、ほかに一度だけかかる費用もあります。 貨物軽自動車安全管理者講習の受講料(eラーニングの3機関で3,300〜3,700円)と、初任診断(NASVA で4,800円)は、土日だけの副業でも必要です。 軽自動車で荷物を運んで報酬を受け取るのは、働く日数にかかわらず貨物軽自動車運送事業にあたり、経営届出と黒ナンバー、安全管理者の選任が要るためです。 手続きの順番は「軽貨物の開業の手続き」にまとめています。
自分の軽バンではなく、レンタルやリースの軽バンを使う場合は、その月額が経費に加わります。 月8日しか使わない車に月額を払うと、1日あたりの車の費用は、毎日使う場合の2倍以上になります。
記事によって残る額が「5万円前後」と「12〜16万円」に割れる理由
「軽貨物 副業 土日」で上位に出る記事では、土日の副業で月に得られる額を「5万円前後」とする記事と、「12〜16万円」とする記事があり、倍以上違います(2026年10月19日に検索して確認)。 どの記事も前提をすべては書いていないので、このサイトの計算例と比べて、差が出る要因を分けると次の3つになります。
一つ目は、売上の額か、経費を引いた後の額かの違いです。 例2の売上は月12.8万円で、「12〜16万円」はこの売上の水準に近い額です。 同じ例2でも、経費を引くと月約10.8万円、税を引くと月約8.6万円になります。
二つ目は、1日の稼働時間の違いです。 1日4時間ほどの例1と8時間ほどの例2では、売上が倍違い、残る額は約2.5倍違います。 経費のうち保険などの固定費は稼働時間で変わらないので、働く時間が短いほど、売上に対して残る割合が下がります。 例1の経費を引いた後の額は月約4.4万円で、「5万円前後」はこの水準に近い額です。
三つ目は、車の費用と保険の入れ方の違いです。 レンタルやリースの車を使う前提の記事は、その月額を引くので残る額が小さくなります。 任意保険料を経費に入れていない記事もあり、この例で任意保険を除くと、例2の所得は月約8,300円増えます。
自分の条件で比べるときは、1日の稼働時間、車をどう用意するか、任意保険の見積もりの額をそろえてから、記事の額と見比べてください。
確定申告が要るかの判定
会社員が副業で軽貨物をしたときに確定申告が要るかは、国税庁 No.1900 の基準で判定します。 給与を1か所から受けていて、年末調整が済んでいる会社員は、給与所得と退職所得以外の所得の合計が1年で20万円を超えると、確定申告が必要です。
ここでの20万円は、売上ではなく所得(売上 − 経費)の額です。 上の例の経費で計算すると、1年の売上が約44万円(月8日なら1日あたり約4,600円)を超えたあたりで、所得が20万円を超えます。 経費が少ない人は、もっと少ない売上で20万円を超えます。
| 状況 | 所得税の確定申告 | 住民税の申告 |
|---|---|---|
| 給与以外の所得が1年で20万円を超える | 必要 | 確定申告をすれば不要 |
| 給与以外の所得が1年で20万円以下 | 不要 | 必要 |
| 給与を2か所以上から受けている、給与の収入が2,000万円を超えるなど | 国税庁 No.1900 で別の基準を確かめる | ― |
所得が20万円以下でも、住民税の申告は必要です。 住民税は、所得税と違って、所得の多少にかかわらず給与と合わせて計算するためです。 地方税法は、前年に給与以外の所得がなかった給与所得者などを除いて住民税の申告を求め、所得税の確定申告書を出した人は住民税の申告をしたものとみなしています(317条の2、317条の3)。 横浜市も、給与以外の所得が20万円以下で確定申告をしなかった場合は、住民税の申告が必要で、確定申告をした場合は住民税の申告をしたものとみなすと案内しています。 申告の時期と窓口は、住んでいる市区町村の案内で確かめてください。
副業の所得は事業所得か雑所得か
会社員の副業の所得は、事業所得になる場合と、雑所得(業務に係る雑所得)になる場合があります。 国税庁は、副業に係る収入のうち営利を目的とした継続的なものを「業務に係る雑所得」の例に挙げています。
どちらになるかで、次の2つが変わります。
- 青色申告特別控除は、事業所得などを生ずべき事業を営む人が受けられる控除で、雑所得には使えない
- 雑所得の赤字は、給与所得など他の所得と相殺(損益通算)できない
上の計算例は、どちらの場合でも同じになるよう、青色申告特別控除を入れず、赤字にならない条件で計算しています。 自分の副業がどちらに当たるかの判断の基準は、この記事では扱っていません。 迷うときは、申告の前に税務署で確かめてください。
会社の就業規則で確かめること
軽貨物の配達を始める前に、勤め先の就業規則で、副業が禁止か、許可制か、届出制かを確かめます。
厚生労働省の「副業・兼業の促進に関するガイドライン」(2022年7月改定)は、裁判例を踏まえて、原則として副業を認める方向とすることが適当としています。 一方で、会社が副業を禁止や制限できる場合として、本業の労務の提供に支障がある場合、業務上の秘密が漏れる場合、競業で会社の利益を害する場合、会社の名誉や信用を損なう場合を挙げています。
土日の配達では、一つ目の「労務の提供に支障がある場合」に気をつけます。 委託で働く軽貨物の時間は、労働基準法の労働時間の通算の対象になりません(ガイドラインはフリーランスを通算されない例に挙げている)。 そのため、会社が労働時間として把握しない時間が、平日の勤務に重なって増えることになります。 ガイドラインは、こうした場合も、本人からの申告などで就業時間を把握し、長時間にならないよう配慮することが望ましいとしています。 会社に届け出るときは、土日に何時間働くかも伝えておきます。
自分の条件で残る額を出すには
1日の売上、走行距離、任意保険の見積もりの額が分かったら、手取りの計算で、売上から経費を引いた所得を出します。 手取りの計算は、軽貨物の所得だけがある個人事業主の税と社会保険料を計算するツールで、給与のある人の所得税の増加は計算しません。 会社員の副業では、計算結果の所得(事業所得)までを使い、上の節の式(所得 × 給与の税率 × 1.021 + 所得 × 10%)で税の増加を見積もってください。 この式は、税率の区分と基礎控除の額が変わらない場合の概算です。
経費に入れる項目は「軽貨物の経費の内訳」で、1日の報酬の形が違う仕事どうしの比べ方は「軽貨物の単価の見方」で確かめられます。