軽貨物の報酬は、1個いくらの個数単価、1日いくらの日当、1時間いくらの時間単価、走った距離で決まる距離制と、形がばらばらです。 形の違う条件を比べるには、拘束時間と走行距離を確かめて、1時間あたりの額にそろえてから、走った距離の燃料費を引きます。
公式に報酬を公開している例として、Amazon Flex は軽貨物車で「約4時間の稼働で最大9,600円」と書いています。 1時間あたりでは最大2,400円で、4時間で60km走ると仮定し、ガソリン単価を仮に1Lあたり170円、燃費を15.1km/Lとすると、燃料費を引いた後は1時間あたり最大約2,231円です。
単価の「相場」としてまとまった公的な統計はなく、このサイトでは相場の額を示していません。 この記事は、手元にある条件を自分で比べるための、そろえ方と確かめることをまとめたものです。
報酬の4つの形と、1時間あたりへのそろえ方
報酬の形ごとに、1時間あたりにそろえる式と、契約の前に聞いておくことが違います。
| 報酬の形 | 決まり方 | 1時間あたりにそろえる式 | 聞いておくこと |
|---|---|---|---|
| 個数単価 | 配った荷物の個数(か配達先の数)× 単価 | 単価 × 1日の個数 ÷ 拘束時間 | 「1件」が荷物1個か配達先1か所か、不在で持ち戻った荷物を数えるか、1日に任される個数 |
| 日当 | 1日いくら(コースや便ごと) | 日当 ÷ 拘束時間 | 積み込みと待ち時間を含めた拘束時間、個数が増えたときの扱い |
| 時間単価 | 稼働した時間 × 単価 | そのまま(拘束時間との差を確かめる) | 時間の数え方(ブロック単位か、延びた分を払うか) |
| 距離制 | 基本料金 + 距離の料金(スポット便など) | 運賃 ÷ (走る時間 + 積み下ろしと待ち時間) | 帰りの空の距離を含むか、高速代と待機料を誰が払うか |
拘束時間は、配達している時間だけでなく、営業所での積み込み、荷物の仕分け、配達先での待ち時間を含めた、仕事のために空けておく時間です。 個数単価と日当は、配達の時間だけで割ると1時間あたりの額が高く出るので、拘束時間で割ります。
距離制は、1回の運賃が大きくても、走る距離が長いぶん燃料費も大きくなります。 1時間あたりにそろえた後、燃料費を引いて比べないと、距離の長い仕事が実際より有利に見えます。
「1件」の数え方で単価が違って見える理由
軽貨物の単価を紹介する記事では、1件あたりの単価が「150〜200円」「400〜600円」「500〜800円」などと、記事ごとに大きく違います(2026年10月19日に検索して確認)。 この差は、どの記事も「1件」と書いていながら、指しているものが揃っていないことから出ていると見られます。
- 荷物1個ごとの単価(宅配の個数単価)
- 配達先1か所ごとの単価(1か所に複数個を届けても1件)
- 企業間の配送やスポット便の1回ごとの単価
荷物1個の単価と、1か所に何個も届ける配達先ごとの単価を並べると、同じ仕事でも単価が数倍に見えます。 単価の額を聞いたら、何を1件と数えるか、1日に何件になるかを一緒に聞いて、1日の売上に直してから比べます。
公式に公開されている条件を1時間あたりにする
委託の報酬を公式サイトで公開している例を、1時間あたりにそろえると次のようになります。 どれも「最大」の額で、実際の報酬は時期、エリア、デリバリーステーションで変わります。
| サービスと対象の車 | 公式に書かれた報酬 | 1時間あたり(最大) | 前提 |
|---|---|---|---|
| Amazon Flex(軽貨物車) | 約4時間の稼働で最大9,600円 | 2,400円 | 2025年4〜6月に関東圏で4時間程度稼働した場合の想定 |
| Amazon Flex(軽貨物車、18時以降) | 約4時間の稼働で最大10,200円 | 2,550円 | 同上 |
| Amazon Flex(黒ナンバーの軽乗用車) | 約4時間の稼働で最大7,528円 | 1,882円 | 関東圏で2025年4〜6月に4時間程度稼働した場合の想定(地域により異なる) |
出典:Amazon Flex の公式サイト、報酬のページ、よくある質問(2026年10月21日に確認)。 1時間あたりの額は、編集部が4で割って出した計算値です。
Amazon Flex の報酬は、ブロックと呼ばれる時間の単位で決まり、稼働の目安は約2〜8時間です。 4時間の目安を超えて配達が延びた場合の扱いは、上の公式の値からは分からないので、1時間あたりの最大の額と実際の額は違うことがあります。
ほかの委託会社では、ピックゴー(CBcloud)とハコベルの軽貨物の募集ページを確かめましたが、単価と日当は公開されていませんでした。 このサイトは求人や委託の仕事の紹介を扱っていないので、委託会社ごとの条件の一覧は載せていません。
燃料費を引いて比べる計算例
形の違う3つの条件を、1時間あたりにそろえて燃料費を引くと、次のようになります。 A、B、C の数字は、計算の手順を示すための仮の値で、相場や特定の会社の条件ではありません。
| 条件 | 1日の売上 | 拘束時間 | 走行距離 | 燃料費 | 1時間あたり(燃料費を引く前) | 1時間あたり(燃料費を引いた後) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| Amazon Flex(軽貨物車、最大の額) | 9,600円 | 4時間 | 60km(仮定) | 676円 | 2,400円 | 2,231円 |
| A(仮の条件)個数単価150円 × 100個 | 15,000円 | 10時間 | 80km | 901円 | 1,500円 | 1,410円 |
| B(仮の条件)日当14,000円 | 14,000円 | 9時間 | 100km | 1,126円 | 1,556円 | 1,430円 |
| C(仮の条件)距離制のスポット便 1便12,000円 | 12,000円 | 6時間 | 200km | 2,252円 | 2,000円 | 1,625円 |
燃料費は、ガソリン単価を仮に1Lあたり170円、燃費を15.1km/L(スズキ エブリイの WLTC 燃費の幅の下限)として、走行距離 ÷ 燃費 × ガソリン単価で出しました。 1kmあたりの燃料費は約11.3円です。 計算はこのサイトの手取りの計算と同じ燃料費の式で行い、円未満は四捨五入しています。
燃料費を引く前は、C の距離制が A と B より1時間あたり約450〜500円高く見えます。 燃料費を引くと、C は走る距離が長いぶん差が縮まり、A と B との差は約200円になります。 A と B は、1日の売上ではAが1,000円多いものの、拘束時間が1時間長いので、1時間あたりでは B のほうがわずかに上です。
この比べ方で引いているのは燃料費だけです。 走る距離が長い仕事は、タイヤやオイルの交換が早くなり、車の傷みも進みます。 車の減価償却費や任意保険料のように、走った距離や時間に関係なくかかる費用は、1か月の売上から引いて手取りの計算で確かめます。
契約の前に書面で確かめる条件
2024年11月1日に施行された、特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律(フリーランス法)は、従業員を使わない個人の事業者(特定受託事業者)に業務を委託する事業者に、給付の内容、報酬の額、支払期日などを、書面かメールなどで直ちに明示することを求めています(3条)。 一定の事業者が広告などで委託の仕事を募集するときは、虚偽の表示や誤解を生じさせる表示をしてはならず、情報を正確で最新の内容に保つことも求められています(12条)。
単価を比べるときは、募集の文言だけでなく、明示された条件で次のことを確かめます。
- 報酬が委託手数料を引く前の額か、引いた後の額か
- 燃料費、高速代、駐車場代を、報酬と別に払ってもらえるか
- 不在で持ち戻った荷物と、再配達の荷物を、個数に数えるか
- 拘束時間(積み込みと待ち時間を含む)と、時間が延びたときの扱い
- 支払いの時期(Amazon Flex は運用では毎週水曜日に前の週の分、ハコベルは月末締めの翌月25日払いと公式に書いている)
- 車と保険の条件(Amazon Flex は、対人無制限と対物1億円以上を含む任意保険への加入を求めている)
求人の広告に月の額が書かれている場合は、その額が売上なのか、委託手数料や車のリース代を引いた後の額なのかで、手取りが大きく変わります。 売上と手取りの違いは「軽貨物ドライバーの手取り」で、前提をそろえた計算例と一緒に説明しています。
単価から1か月の手取りを出すには
1時間あたりにそろえた額は、条件どうしを比べるための値で、そのまま手取りにはなりません。 1か月の手取りを出すには、単価、1日の個数、1か月の稼働日数から売上を出し、委託手数料、燃料費、車の費用、保険、税金と社会保険料を引きます。
手取りの計算は、売上の入れ方で「単価、個数、稼働日数から出す」を選ぶと、個数単価の条件から1か月と1年の手取りの目安を出せます。 求人に書かれた月の額から売上を逆算することもできます。 経費に入れる項目は「軽貨物の経費の内訳」で確かめてください。